20歳から始めた読書感想文

本の感想や日記をのせてます。

少年Aの自伝出版について

自伝を書くとは何か

クローズアップ現代、少年Aの出版の是非についての特集を見る。

彼は、「自分の存在を確立したい」「自分のことをわかって欲しい」という理由で本を書いたそうです。

 

僕は、彼の出版の良し悪しについては言わないことにします。

変わりに「犯罪者が自伝を書く、多数の人が読む」ということが、本当に重要なのか考えてみる。

今回はゴーストライターが書いてる可能性は無視します。

 

自伝を書くとは「自分の人生を、他者に受け入れられる形に作り直すこと」である。

作り直すというのは、もちろん改ざんも含まれる。

 

 

僕は日記をつけているが、日記ではちょくちょく嘘を書く。

大したことをやってなくても、やっぱり書く以上は何かあったことにしないといけないからだ。

そう思って必死に思い出すと、自分が意外と面白いことをやっていたことに気づく。

たとえそれが嘘だったとしても、ほんとうにあったことのように思えてしまう。

 

例えば、ラーメンが自分の好みでなかった場合「店に入った時からそういう予感はあった」と嘘を書く。

不思議なもので、こう書くと「店員の態度の悪さ」とかが鮮明に思い出される。

(食べたときはそんなこと思ってないのに)

 

こういった改ざんは無意識に行われる。

そして、改ざんによって、自分一人でやった行為だとしても「社会と繋がっている」という感覚が得られる。

なぜなら、改ざんは他者へ語るためにすることだからだ。他者と繋がろうとする意志が、改ざんを行うのだ。

 

なので、自伝を書くのは更生としては有効だと思う。

だが、事実が書いてあると考えるのは危険である。

書いてあるのは少年Aにとっての真実のみだ。

 

犯罪者の自伝を読む効果

次は、読者の立場から考察してみる。

「社会が、犯罪者の自伝を読むことによって得られる効能」とはなんだろうか?

 

ヒトラーの『わが闘争』を漫画版で読んだことがある。

 

ヒトラー

ユダヤ人は多大な資本を使い、労働者であるドイツ人を支配している』

『ドイツを元に戻すには、ユダヤ人の殲滅が必要だ』

と主張した。

 

僕は、ヒトラーの考えはそんなに変ではない、と感じた。

ユダヤ人を『自民党』『マスコミ』とかに置き換えたら、今の日本と変わらない気がする。

 

なので、この少年Aの本を読むことによって、少年Aの行為が変ではないと感じる人が増えるのではないか。

少年A本の読者10万人に「この事件の原因は『少年A、(少年Aの)親、社会』のどれですか」というアンケートとったらどうなるんだろう。

個人的には「20、40、40」くらいになると思ってる。

犯罪者の出版は「犯罪者が100%悪い」という社会的同意がないと問題だ。

 

もちろん「不幸に陥っているときは、自分の判断力を過信しないほうがいい」みたいな教訓もつくれる。

だが、そういうのは羅生門でも読めばいい。

 

少年Aの本が読まれる必要はない。だが、彼が本を書く意味は、彼にとって有益なことだとは思う。