20歳から始めた読書感想文

本の感想や日記をのせてます。

お前の噂を聞きたい。私たちを忘れろ。手紙も書くな。

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(2011/03/18)
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齋藤孝先生の「就職力」に載っていた映画です。

「見ると良い」とだけしか書かれていませんでしたが、見終わって「見てよかった」と思いました。

イタリアの映画館の話なのですが、観客の騒がしさが好きでした。

みんなで笑い合ったり、検閲されたキスシーンにみんなでブーイングしたり……。

なんだか暖かいのです。

映画は黙って見るものだと思いましたが、こういう見方も面白いですね。

映画を見に来ているのは、変な人ばかり。

「字が読めない」「私もだ」

「私は寝にきたんだ」

「こいつをつまみ出せ。もう10回も見てる」

こんな台詞が飛び交っています。

九九ができなくて体罰を受けた子も、一緒に見て笑っている。

ちょっとタバコを吹かしながら……(良いのか?)

でも、逃避という感じは全然ない。

『第二の家族に包まれている』という感じです。

さて、ストーリーは……

映画監督サルヴァトーレは、故郷の母からアルフレード(師匠)が死んだという知らせを受け取ります。

サルヴァトーレはベッドで寝ながら昔を思い出します。

サルヴァトーレは、30年くらい前に故郷を出て以降、一度も故郷に帰って来ていないのです。一体なぜなのか?

少年時代、「トト」と呼ばれていたサルヴァトーレは、映画に魅了されます。

そして、何度も映写室に入り込んで、映写技師のアルフレードにつまみ出されます。

このシーン――アルフレードがお茶目です。

「(切り取られた検閲シーンの山を)もらっていい?」

「後で戻すからだめだ」

「どうして(戻さずに)そのままなの?」

「どれがどの映画なのかわからなくなったんだ」

「わかった。あの山はお前にやる。その代わり、俺が管理する」

アルフレードが、トトと一緒にテストを受けるシーンでは

「頼む。教えてくれ」

という始末です。

格好いいシーンもあります。

トトが、牛乳を買うための50リラで映画を見てしまい、親に叱られているときに

「今日の落し物に50リラがあった」

と言って、50リラをトトに渡します。

そして、アルフレードはトトに映写機の操作を教えるようになります。

アルフレードは、営業終了後も「映画を見たい」という観客のために、広場の壁に映画を映し出します。

このシーンは、映画技師の楽しさをトトに教えたシーンだと思います。

観客がサプライズに歓喜する様は、仕事の楽しさとして残るでしょう。

しかし、その結果映画館が火事になり、フィルムを救い出そうとしたアルフレードは火傷で視力を失います。

そしてトトは、新しく建て直された映画館「ニュー・シネマ・パラダイス」で映写技師として働き出します。

トトは成長すると、エレナという恋人が出来ます。

彼はエレナを追いかけますが、やがてエレナは音信不通に。

落ち込むトトにアルフレードはこう言います。

「人生はお前が観た映画とは違う。人生はもっと困難なものだ。

村を出ろ。ローマに戻れ。もうお前とは話したくない。お前の噂を聞きたい。

帰ってくるな。ノスタルジーに惑わされるな。私たちを忘れろ。手紙も書くな。

我慢できずに帰って来ても、私の家には迎えてやらない。

自分がすることを愛せ。子どもの頃に映画館を愛したように」

トトはその言葉に従って列車に乗り、ローマに向け旅立ちます。

この台詞、普通とはまるで違いますよね。

「私たちを忘れろ」と言って送り出す人はいないでしょう。

逆に「時々は思い出してくれ」「手紙を送ってくれ」と言いそうです。

トトはこの言葉で、故郷への思いを一層強くしたと思います。

しかし、帰ることはできない。だから映画の原動力にしたのでしょう。

30年後、映画人として成功したサルヴァトーレは、アルフレードの葬儀に出席するため、故郷に帰ります。

そこで、アルフレードが彼に遺した形見を渡されます。

それは、検閲されたラブシーンばかりを繋げた一本の映画でした。

このシーンがクライマックス。

別れ際に「私たちを忘れろ」と言っていたアルフレードが、「思い出してくれ」と言っているような気がします。

故郷や恋人への未練を絶ち、今まで頑張ったトトへのご褒美なのでしょう。