これだけの境界条件から、科学的に再現可能な他の解答が考えられますか?
■「理科系作家」と称される森博嗣のデビュー作
この本は僕にとって、とても衝撃的だった。他のどんな作品とも明らかに違う、全く新しい小説だった。
まず、登場人物が理系であるため、会話や思考が独特だ。
科学の話題がごく自然に語られ、人生観や哲学もふんだんに盛り込まれている。
1文1文に無駄がなく、すべての文章が面白い。
本書はミステリィであるが、推理方法も独特である。
「犯人の目的は常人には理解できない」と考え、「事実だけをもとに推理」する。
そして、誰もが考えもしなかった結論を導く。
「これだけの境界条件から、科学的に再現が可能な他の解答が得られますか?」
□じゃあ、コンピュータウイルスは生物だね
生物の定義は何か。
「いつか死ぬもの」は定義にならない。死ぬという定義の前に、生きていることを定義しなければ。
「自己繁殖すること」とすると、コンピュータウイルスも生物に含まれる。
「有機物で出来ている」は定義にならない。
「生物を作るものを有機物」と定義しているからだ。
「自己防衛能力、自己繁殖能力、エネルギィ変換を行う」とするとどうだろう?
すると、起き上がりこぼしも生物になる。
これは有機物(木)で出来ている。自己防衛能力(倒されても起き上がる)もある。その際、ポテンシャルエネルギィを運動エネルギィに換えている。
また、人間が欲しがるため、どんどん生産される。結果的に自己繁殖している。
他の生物の力がないと自己繁殖でない生物はいくらでもいる。
すベてがFになる (講談社文庫) (1998/12/11) 森 博嗣 商品詳細を見る |