ものを作るということ
芸術の価値は、作品そのものよりも、作品を生み出す過程にあると思う。
「生のオブジェ」というものが、兵庫県宝塚市の武庫川中州にある。石を「生」という文字の形に積み上げた作品だ。
この作品は、阪神・淡路大震災から10年後の平成17年1月、同市在住の現代美術家、大野良平さん(51)が「街と人の心の再生」をテーマに制作した。
使われる用途のない石に新しい命を宿し、「再生」を見事に結晶化させたこの作品は、人々の心に大きな影響を与えたと思う。
大野さんの再生にかける想いが、作品を通して人々に伝わっていく。
「再生の思いを込めて石を一つ一つ積み上げることに作品の意図がある」
石のオブジェといえば、沖縄の高校生が作った「石の声」という作品がある。
沖縄戦の犠牲者数23万6095人と同じ数の石に、1から初めて番号を書きこみ、円錐型に積み上げてある。
高校生達は、1つ1つの石に対して「この石はどんな人だったんだろう」と想像しながら書いたという。
だからこそ、見ている人は石と犠牲者を重ねることが出来る。
「何を作るか」ではなく「どう作るか」。
良いものには必ず、良い魂が宿っている。